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ちば心理教育研究所

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杏奈と信子――『思い出のマーニー』より

ジブリ作品『思い出のマーニー』の冒頭。野外スケッチの授業中、杏奈は教師から書きかけのスケッチを見せるよう迫られます。杏奈は誰にも見られたくないのですが、教師の「どれ、見せてみろ」を拒否できず、おずおずとスケッチブックを差しだします。

杏奈は嫌なことを嫌だと断れません。嫌なことを嫌だと断れないのは、「自分がない」人の特徴であり、「自分がない」のは非虐待の生い立ちを持つ人の特徴でもあります。

 

物語の中盤、こんな場面があります。地元の子どもである一つ年上の信子らと七夕祭りに出かけ、みなにならって杏奈は短冊に願いごとをしたためます。運悪く信子に短冊を取り上げられ、読み上げられてしまいます。

「毎日普通に過ごせますように……。杏奈ちゃん、普通ってなあに?」

信子に問いつめられたあげく、杏奈は自分でも思いがけないひとことを発します。

「いいかげんほうっておいてよ! 太っちょぶた……!」

これはおそらく生まれて初めて杏奈が他者に怒りをぶつけた体験だったことでしょう。このときほんの一瞬ですが、杏奈は信子というひとりの他者にかかわることができました。

信子という一人の他者とかかわれたことで、杏奈は自分の本音(怒り)ともしっかりつながるきっかけを手に入れました。この信子体験を経て、ようやく杏奈はマーニー――すなわち杏奈の深いトラウマの象徴――としっかり出会う準備ができます。この出来事の直後、一艘のボートにいざなわれるかのようにして、杏奈はマーニーと出会うべく、湿っち屋敷に向かいます。

 

以上を整理するとこうでしょうか。

わたしが相手に「お断り!」とか、「イヤッ!」とか、本音をぶつけられると、わたしは自分と深くつながれ、相手とも真にかかわることができます。逆にわたしが自分の本音にふたをして、ほんとは嫌なのに、仕方なくスケッチブックを差しだすようなことをしているかぎり、わたしは自分の本音ともつながれないし、相手とも深くかかわれません。

 

わたしは生まれもった自分の資質とうまくつながれる時、ひとともうまくつながれるし、ひととうまくつながれる時、自分の資質ともうまくつながれます。それは、ひとと対話できる関係を構築することでもあります。

死を迎えるとき、「生まれもった資質を十分に生きられた」「生まれてきてよかった」「生きてきてよかった」と思えるとき、おそらく人は幸せを感じることができることでしょう。

 

もしそう思えないと、「死んでも死に切れない」「浮かばれない」という感覚に陥るのかもしれません。

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